Written by M.Ken'ichi

足関節(足首)の捻挫を正しく理解する【後半】

整形外科

足首の捻挫について知りたい方
『 足首の捻挫について知りたい。簡単に解説してほしいな。』

そんな質問にお答えします。
今回は後半。やや長いので二部構成です。前半がまだの方はこちらをどうぞ。

わたくし、現役の理学療法士です。以前、整形外科の病院やクリニックに勤務しておりました。今回、過去の勉強会でまとめた資料をもとに、一般の方向けに作成しております。時間があるときに眺めてみてください。

※文献をもとに作成していますが、これがすべてではありません。詳しくは受診先の医師や理学療法士などに指示を仰ぎましょう。ちょっとした参考程度でお願いします。

後半の内容

  • 足関節捻挫の症状とは
  • 足関節捻挫の治療について
  • 足関節捻挫の予後について
  • おわりに

スポンサードサーチ

足関節捻挫の症状とは

足関節 足首 捻挫
足関節捻挫では『 痛み・腫れ・皮下出血 』が主症状です。多くの場合、外くるぶし周辺に典型的な症状を認めます。痛みに関しては、一瞬どこが一番痛いのかわからなくなるほどの症状に襲われますが、やがて限局してきます。腫れは受傷直後から3日間くらいがピークです。皮下出血は受傷2日目くらいからじわじわと顕著になってきます。

ちなみにこの写真、何を隠そうわたし自身。重症度はⅡ度(前距腓靭帯の完全断裂、踵腓靭帯は正常 or 部分損傷)。前方引き出しテストも陽性でした。Ⅰ度ではここまでの症状は出ませんが、Ⅲ度ならもっとひどい症状が出ます。

※受傷直後、明らかに荷重が困難で4歩も歩けないときは骨折を伴っている可能性が高いです。とくに小児の場合、骨折の可能性が極めて高くなります。『 足首(足関節)の捻挫と骨折の見分け方 』については以下の記事にまとめました。

足関節捻挫の治療について

認知症
さてここからが本題ですが、治療に関しては『 100%これをやればいい 』という正解がありません。『 重症度 』『 どこまでのレベルを求めるか 』で大きく左右されます。

普通の生活に支障ない程度を求めますか?運動に支障ない程度を求めますか?その運動は散歩程度?ジョギング程度?部活動レベル?アスリートレベル?などなど。置かれている状況や立場によって求めるレベルが異なります。今回は比較的スタンダードであろう考え方についてざっくりと解説していきます。

ひとまず重症度のおさらいです。重症度が高いほど各症状は強くなりますし、それだけの衝撃が加わったことを意味します。

Ⅰ度:前距腓靭帯の部分損傷、踵腓靭帯は正常
Ⅱ度:前距腓靭帯の完全断裂、踵腓靭帯は正常 or 部分損傷
Ⅲ度:前距腓靭帯、踵腓靭帯の完全断裂

なお、足関節捻挫の治療では『 靱帯の修復過程 』について考える必要があります。修復過程とは、靱帯が組織学的(構造的)なレベルで回復する期間のことです。部分損傷と完全断裂では状態が大きく異なりますが、およそ『 6週間~12週間 』が目安となります。

6週間~12週間という修復過程と症状はイコールではありません。初回の捻挫であれば、症状は消失していることが多いと思います。ただし『 症状がないから、靱帯は修復完了 』というわけではありません。せいぜい60%程度です。したがって大きなストレスには十分に注意しましょう。重症度によりますが、これくらいの日数が経てば日常生活にはほとんど支障がないと思います(いわゆる不安定性があると、これがまた厄介)。

ちなみに筋肉や骨に比べると、靱帯組織の修復には時間を要します。理由は血流が乏しいからです。さらに残念なことに、修復されても100%元通りの靱帯組織に戻るわけではないのが悲しいところ。

受傷直後~3日目

無難な対応はR.I.C.E.(Rest:安静、Ice:アイシング、Compression:圧迫、Elevation:挙上)処置です。初期における炎症症状を最小限に食い止めるためです。ただし受傷時の状況によって大きく左右されるので、すべてを実行するのは難しいかもしれません。その際は『 できる対応をする 』ことに専念しましょう。

重症度によってはおよそ3週間のギプス固定になります。程度が軽ければテーピングや簡易装具が適用になるかもしれません。何はともあれ、おとなしく医師の指示に従いましょう。わたしの場合、受傷翌日にギプス固定となりました。痛みに応じて全荷重OKですがめちゃめちゃ不便です。

3日目~2-3週目

【 Ⅰ度 】
たいていの場合、痛み・腫れ・熱感などの症状は治まってきます。様子を見ながら普通の生活に戻ることが多いでしょう。適宜、テーピングや簡易装具を着用すると良いと思います。ただし生活に支障がないかもしれませんが、靱帯組織が治癒しているわけではないことをお忘れなく。くれぐれも再受傷には気をつけましょう。

【 Ⅱ度 】【 Ⅲ度 】
おそらく、すでにギプス固定がされていると思います。固定中はどうしてみようもできませんが、何もしないわけにはいきませんね。できれば患側の足指の運動、患側の荷重練習、健側の筋トレを行いましょう。でも無理する必要は全くありません。ちなみに固定されているとはいえ誤ってぶつけたり、捻ったりすると患部に響きます。くれぐれも注意してください。体験談なので間違いありません。

2-3週目~3ヵ月

【 Ⅰ度 】
靱帯組織の修復がある程度進んでいる状態。ほとんど問題なく生活できていると思います。捻挫で一番怖いのは再受傷。Ⅰ度のような軽症の方はむしろ陥りやすいです。『 捻挫はクセになる 』と言いますが、まさにその通り。きちんと修復が完了しない状態で受傷を繰り返すと、一生引きずることになりますよ。慢性足関節不安定症が代表的です。

【 Ⅱ度 】【 Ⅲ度 】
長期間のギプス固定には弊害が多いため、長くても2-3週間です(わたしは2週間でした)。このくらい経つと靱帯がゆるく結合してきます。それ以降はテーピングや簡易装具を使用しながら、少しずつ普通の生活に戻っていきます。ただしギプス除去後は思っている以上に足関節の可動域や筋出力が低下しており、怖さも相まってめちゃめちゃ歩きづらいです(体験談)。少なくとも大腿四頭筋と下腿三頭筋の収縮をある程度コントロールできるようにしましょう。ここまでくると痛みや腫れはだいぶ治まっています。もちろん無理に動かすと痛いですけどね。

ということで、できれば専門家によるリハビリテーションやトレーニングを受けましょう。わけもわからずに自主トレーニングをするよりも、専門家に管理してもらう方が賢明です。

National Athletic Trainers’ Association(NATA)によると、再発予防として『 バランスや神経筋コントロールに重点を置いたリハビリテー ションを最低3ヵ月間続けること 』が強く推奨されています。さらに推奨度は低いながらも『 患側の足関節や股関節周囲の筋力アップ 』『 足関節の可動域制限の改善 』も欠かせないですね。いずれにせよ、スポーツ復帰を目指すのであればすべて重要です。ごく一般的な生活を送る方にとっては、やや過剰かもしれません。

大切なのは『 靱帯の構造的な修復 』を考慮すること。これを無視し、無理をしても何の得もありません。と、わたしの主治医がおっしゃっておりました。スポーツ復帰を目指すのであれば『 受傷から3ヵ月前後 』を目標に、ある程度の計画性をもってリハビリテーションに励む必要があります。

ただし3ヵ月を過ぎたからとはいえ、残念ながら靱帯が100%元通りになることはないのが現状。対処を施しながら上手に付き合っていく必要があります。

足関節捻挫の予後について

足首 足関節 捻挫
足関節捻挫の再発率は下肢傷害の中でもっとも高いです。特にスポーツにおける再発率は73%であり、そのうちの59%に痛みや不安定感などの後遺症が残存していたとのことです。ごく一般的な生活を送る方の再発率は不明ですが、あまり軽視しないのが賢明でしょう。

見解は様々ですが、スポーツ選手に限って言えば、保存療法がダメなら手術療法も選択の一つです。とはいえ、いずれにせよ『 治せるときに治す 』のがもっとも重要。100%元通りとはいかずとも、できるだけ『 痛みや不安定感なく、元通りに近い状態 』にまで治すのが大切なのです。

おわりに

捻挫の瞬間はコンマ1秒の世界です。意図せず瞬間的に強い負荷がかかったとき、靭帯損傷や断裂が起こります。『 たかが捻挫、されど捻挫 』。あまり軽視せず、きちんと対処しましょう。捻挫をしたら、面倒くさがらずに整形外科を受診しましょう。

参考文献

篠原 純司:スポーツ活動における足関節捻挫 ―後遺症と捻挫再発予防について― . 日本アスレティックトレーニング学会誌, 第3巻, 第2号, 127-133(2018)
小林 匠:足関節捻挫の病態と治療. 日本アスレティックトレーニング学会誌, 第3巻, 第2号, 117-126(2018)