【心理学】お願いするときの心理学|後半
【心理学】お願いするときの心理学|前半|matsukenblog
前半の内容です。日常生活において、私たちはさまざまなお願いをしています。でも、ただひたすらお願いをするだけでは、うまくいかないことが多々あります。そんなときは『フット・イン・ザ・ドア・テクニック』『一貫性の原理』を活用することで、うまくいくかもしれません。くれぐれも悪用は厳禁です。
ここでは参考書籍から得た心理学の理論をもとにざっくりと解説していきます。無論、こうすれば間違いないという方法は存在しませんが、心理学はきっとあなたの助けになります。
スポンサードサーチ
本日の内容|後半
- 軽めの提案を承諾してもらったあと、条件を変えたり、つけ加えたりする
- 大きなお願いを最初に断らせる
- まとめ
軽めの提案を承諾してもらったあと、条件を変えたりつけ加えたりする
相手が承諾しやすい提案をして、その承諾を得たあとで条件を変えたり、つけ加えたりする方法を『ロー・ボール・テクニック』といいます。ロー・ボール・テクニックについて行った実験をご紹介します。
ロー・ボール・テクニック|心理学者ジェリー・バーガーによる実験
大学生を60人集め、1時間程度で終わる簡単な計算問題を行う実験に参加してもらいました。このとき、大学生を20人ずつ3つのグループに分けました。
実験のポイント
あとから「金銭的報酬はない」と悪い条件を伝えられたグループAのほうが、はじめから悪い条件を伝えられたグループCよりも参加者が多かった点がポイントです。グループAは「話が違うじゃないか」と怒り出してもよさそうなのに、なぜ承諾する割合が高かったのでしょうか。また、「金銭的報酬がない」と別の実施者から伝えられたグループBは、さらに参加者が減ったのはなぜでしょうか。
なぜ「話がちがう」のに受け入れたのか?
前半でお話したように『一貫性の原理』がはたらいたからです。グループAの多くは報酬目あてで参加を承諾しています。たとえお目あての報酬がなくなってしまっても、いったん承諾したしたことを撤回する行為は、一貫性がない人間だと思われ、信頼を失ってしまう可能性があります。それを回避するために、一貫性の原理がはたらき、お願いを承諾する割合が高くなったのです。
一方、グループBに「金銭的報酬を支払えなくなった」と伝えたのは、最初とは別の実施者です。そのため、一貫性の原理が強くはたらかず、実験を辞退する人が多かったと考えられます。
大きなお願いを最初に断らせる
『最初にかなり難しいお願いをして、そのお願いが断られたあとで本命のお願いをする』という方法を最後にご紹介します。この方法は『ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック』と呼ばれています。前半でお話した、事前に小さなお願いをして承諾してもらったあとに本命の大きなお願いをするという『フット・イン・ザ・ドア・テクニック』とは、逆の方法です。ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックについて行った実験をご紹介します。
ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック|心理学者ロバート・チャルディーニによる実験
実験の本命のお願いは「非行少年のグループを動物園に1日連れていくボランティアをしてもらうこと」です。
一度ことわると、次はことわれない
さて、実験の解説です。ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックが効果的であったのは『返報性の原理』がはたらくからです。返報性の原理とは「何かをしてもらったら、そのお返しをしなければならない」という心理のこと。
難しいお願いをことわったとき、ことわった人の心中は「お願いをした人がゆずってくれた」という認識がはたらきます。そのため、ゆずってくれた分をお返ししなければいけないという心理がはたらき、次にお願いをされたことを承諾しやすくなるのです。
まとめ
前半・後半にわけてお話してきました。今回のような方法をうまく用いれば、人にお願いを聞いてもらいやすくなるかもしれません。しかし、自分の利益のためだけに相手の心理を利用するのはいただけません。人にお願いをする際には、お互いの利益(Win-Win)をしっかりと考えましょう。以下、キーワードの復習です。
『一貫性の原理』
自分の行動に一貫性を保とうとする心理のこと。この心理が強くはたらくと、一度決めたことを撤回できなくなる。一貫性の原理をうまく利用したお願いの方法に「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」や「ロー・ボール・テクニック」がある。
『フット・イン・ザ・ドア・テクニック』
事前に小さなお願いを承諾してもらうことで、あとから本命となる大きなお願いを承諾してもらえる確率を高める方法。一貫性の原理を応用しており、お願いされた側は、最初のお願いを承諾した自分との一貫性を保つために、大きなお願いも承諾しやすくなると考えられている。
『返報性の原理』
何かしてもらったら、そのお返しをしなければならないと考える心理のこと。他人のお願いをことわると「相手がゆずってくれた」と認識し、何らかの方法でお返しをしようとする。この心理を利用したお願いの方法に「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」がある。
参考書籍
暮らしや生活にいかす、心と行動の科学 心理学実践編,Newton別冊,2021