Written by m.kenichi

交通事故による頭部外傷(脳震盪など)はアルツハイマー型認知症の発症率を高める

認知症

認知症について調べている人
『頭部外傷の既往があると、認知症の発症率が高まるって聞いたけどどうなの?』

そんな質問にお答えします。

※以前、認知症の専門医の下で勉強していました。ここでは認知症に関して得られた知見などを少しずつ公開していきます。

本日の内容

  • 結論:頭部外傷はアルツハイマー型認知症の発症率を高める
  • 予備能の低下がアルツハイマー型認知症の発症率を高める可能性
  • スポーツ界隈における脳震盪の話題
  • 参考文献

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結論:頭部外傷はアルツハイマー型認知症の発症率を高める

頭部外傷 アルツハイマー型認知症
頭部外傷は認知症の発症率を高めます。厳密にはアルツハイマー型認知症の発症率を高める危険因子の一つとなります。この事実は2000年の時点において、Guo ZやPlassman BLらによる疫学調査で報告されています。

具体的にどのようなメカニズムで発症率が高まるのかというと、残念ながらそれは未だに定説がありません。しかし、どうやら脳予備能の低下がアルツハイマー型認知症の発症率を高くする可能性があると言われています。

言葉の意味

ちょっとだけ言葉の意味を整理します。

頭部外傷とは

頭に外力が加わることで頭部の皮膚、頭蓋骨、脳に損傷を来すこと。「頭部のケガの総称」として用いられる。原因は交通事故、転倒や転落、スポーツによることが多い。近年、アルツハイマー型認知症の発症との関連が注目されている。

脳震盪とは

脳震盪とは外傷による脳の一過性の機能障害のことで、要は頭部外傷の一種。主な症状は意識消失、記憶障害、混乱、頭痛、めまい、耳鳴り、バランス障害。諸症状はおよそ2週間以内で改善することが多い。

予備能とは

軽度の脳細胞の異常変性からくる認知機能の低下を代償する能力のこと。症状の出現を抑制する働きがあり、2つに大別される。
脳予備能:脳の体積やシナプス数などの器質的なもの(脳ミソ自体の変化)
認知予備能:教育や社会活動などの機能的なもの(教育歴や知的活動の習慣など)

予備能の低下がアルツハイマー型認知症の発症率を高める可能性

頭部外傷 アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は脳細胞に異常な変性が起こることです。この異常な変性のことを病理学的変化といいますが、病理学的変化が起きてもすぐにアルツハイマー型認知症が発症するわけではありません。

そこには『ある程度、無症状でいられる期間』が存在します。その期間については年齢や性別、既往歴、性格や生活スタイル、学歴や知的活動(認知予備能)の影響を受けるため一概には言うことはできません。先ほど、脳予備能と認知予備能を合わせて「予備能」と呼ぶと言いましたが、これには「認知機能低下を代償する能力」があります。この能力が働いているうちは症状の出現を抑制できるわけです。

ところが交通事故などで頭部外傷を負うと、大なり小なり脳に対して器質的なダメージを与えます。少なからず脳予備能を低下させる要因となるわけです。脳予備能の低下は予備能の一部が低下すること、つまり「症状の出現を抑制する能力が低下すること」を意味しています。

症状の出現を抑制する能力が低下した状態で病理学的変化が起こると、無症状でいられる期間がぐっと短くなります。つまり高齢になって他の病気などが原因で亡くなる前に、頭部外傷の既往により脳予備能が低下している高齢者は、既往のない高齢者に比べてアルツハイマー型認知症の発症率が高くなるわけです。

もちろん全員がそのような経過をたどるわけではありません。しかしいずれにせよ、頭部外傷による脳へのダメージはタダではすみません。年齢問わず、交通事故や転倒などにはくれぐれも気を付けたいところです。

スポーツ界隈における脳震盪の話題

頭部外傷 アルツハイマー型認知症
スポーツ界隈でも脳震盪(頭部外傷の一種)の話題が挙がっています。特性上、主にコンタクトスポーツが取り上げられています。スポーツは頑張ってほしいけど、とはいえ怪我はしてほしくないです。スポーツをする人間にとってはなかなか悩ましい課題ではあります。

参考文献

・小熊芳実, 佐藤卓也, 佐藤 厚, 今村 徹:頭部外傷の既往がありアルツハイマー病によると考えられる認知機能障害を呈した患者の臨床的特徴. 神経心理学 32; 248-259, 2016
・横堀將司ほか:頭部外傷の病態と治療. 日医大医会誌 2019; 15(2)
・慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト
・INTERNATIONAL RUGBY BOARD