【朳差岳】大石ダム東俣ルートから登る小屋泊登山|2023年5月20,21日
朳差岳の登山を検討中の方
『朳差岳ってどんな感じだろう。なにか情報があれば教えてほしい。』
この記事は備忘録ですが、少しでも参考になれば幸いです。
本日の内容
- 感想
- スケジュールなど
- 登山ルート
- 朳差岳について
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感想
昨年に引き続き、人生2回目の朳差岳。前回は日帰り登山で気力体力ともにギリギリで泣きを見たため、今回はゆっくりと一泊二日の小屋泊をしてきました。結論としては日帰りは日帰りで、泊まりは泊まりできつい山だなと感じた次第です。
序盤こそ晴天だったものの次第にガスがかかり始め、前朳差岳に着くころには真っ白な世界。ただ良くも悪くも日差しを遮ってくれたため涼しくて快適でした。
登頂後もずっとガスの中でしたが夕暮れとともに一気に抜けていき、なんとなく夕焼け空を楽しむことができ、夜景や星空も拝むことができました。しかしそれも束の間、日付が変わるころには爆風の世界。小屋泊といえどなんとなく落ち着かず、熟睡できませんでした。
結局朝になっても爆風は続いており、なんとなく朝焼けが拝めたと思った矢先、あっという間にガスに囲まれてしまいました。山の天気は変わりやすいですね。
さて朳差岳の中盤以降、というか飯豊連峰には雪渓がまだまだ多く残っており、ゼブラ模様の山容が楽しめます。長者平からは雪渓歩きも楽しめますが、さすがに崩れ始めているので注意が必要でしょう。高山植物を咲き始めており、朳差岳の代表格であるハクサンイチゲもそろそろ見頃を迎えそうです。
スケジュールなど
【日にち】2023年5月20,21日(土,日)
【天候】晴れ~曇り、微風~爆風
【気温】10℃~20℃
【登山ルート】大石ダム東俣ルート
【時間】10時間15分(上り6時間40分、下り4時間40分)
【電波状況】圏外(au)
大まかな装備
・ミレー ティフォン 50000 ウォームストレッチジャケット
・ダウンジャケット
・着替え一式
・整容道具
・SEA TO SUMMIT Spark SpⅣ(オーバースペック)
・NEMO スリーピングエアパッド テンサー
・エマージェンシーシート
・携帯トイレ
・ヘッドライト
・虫除けスプレー
・PRIMUS P-153 ウルトラバーナー
・PRIMUS IP-110 小型ガス
・PRIMUS P-CK-K102 イージークック・ソロセットS
・水分2.5ℓ(水2ℓ、ポカリスエット500㎖)
・食料および非常食
・デジタル一眼レフカメラ
・OSMO ACTION
・Deuter エアコンタクトコア50+10
・SINANO ロングトレイル125
・LA SPORTIVA トランゴテックレザーGTX
反省点
食料および非常食が多すぎました。エネルギー切れにビビッて備え過ぎてしまいました。今回は出発前に800kcalほど摂取してから登ったので、結果的にエネルギー切れで困ることはありませんでした。
水分にしても2.5ℓはさすがに多かったです。時期的に湧き水や沢水、融雪水は確実にゲットできるため、最初から2.5ℓを担ぎ上げるのは計算ミスでした。1.5ℓで十分に対応できました。
シュラフも真冬用のものを持っていったので、完全にオーバースペックでした。というかこれしか持っていないので選択の余地がなかったというのが正直なところ。小屋内は最低でも10℃くらいだったため、3シーズン+αくらいで十分に対応できました。
食料にしても水分にしても寝具にしても、備えあれば患いなしとは言うものの、備えればいいわけではありません。時期や気温などを適切に見極めて準備することが大切だと再認識しました。
登山ルート
朳差岳へのルートは3つあります。大石ダムの東俣ルートと西俣ルート、奥胎内の足ノ松尾根から巻いてくるルートです。現在、西俣ルートは未整備のため通行止めとなっています。さらに今年は奥胎内ヒュッテまでの道路が土砂崩れで通行止めのため、定番の足ノ松尾根が使用できません。したがって朳差岳に最短で登るには東俣ルート一択となります。
公式な水場
7:10 東俣彫刻公園~ブナイデ橋(1号橋)
東俣彫刻公園から林道に続くゲートがあるので一般車両はここまで。公園の駐車場には合計15台ほど停められます。ゲートをくぐると長い長い林道歩きが始まります。
林道は土砂崩れや崖崩れ、倒木などでめちゃくちゃです。積雪期の影響が深刻で、復旧までにはかなりの時間を要すことでしょう。通常であればブナイデ橋まで自転車に乗ってくる方もいますが、今回ばかりはお荷物にしかなりません。案の定、途中で乗り捨ててありました。
8:30 ブナイデ橋(1号橋)~カモス橋(2号橋)
林道終点の看板には「朳差岳山頂まで6.5km、約6時間ほど」と書かれています。林道歩きでウォーミングアップは十分、本格的な登山はこれからです。ここから山頂まで水場がないので、ブナイデ橋下の沢水を確保しておきましょう。一口二口ほどダイレクトに飲みましたが、本当は沸騰ないし濾過して飲んだほうがいいかもしれません。
ブナイデ橋(1号橋)を渡って月夜平と呼ばれる少し開けた場所を通り過ぎ、ゴヨウマツの多い乾いた尾根道をしばらく登り、やや切れ落ちた斜面をトラバースしてカモス橋(2号橋)に一旦下ります。昨年は橋の手前に湧き水がありましたが枯れていました。
9:10 カモス橋(2号橋)~カモスの頭
ブナイデ橋(1号橋)もカモス橋(2号橋)も欄干が外されているのでマジで注意してください。特にカモス橋は落ちたらたぶん助かりません。
カモス橋からカモスの頭までがこのルート最大の急登です。相変わらず嫌な急登。昨年はここで心が折れかけました。木の根を掴んでよじ登るなど、とにかく斜度がきつくて長いです。一泊二日分の荷物を背負って登るのはしんどかったです。
10:30 カモスの頭~権内ノ峰
カモスの頭でやや平坦になりますが、まだまだ続きます。ポンと突き出た権内ノ峰が確認できます。権内ノ峰手前の登りにロープの張られた岩場がありますが全然大したことはありません。
11:05 権内ノ峰~千本峰
権内ノ峰は標高1,001mの独標。本来であれば前朳差岳がよく見えるはずですが、ガスに覆われていてげんなり。昨年はこの辺りから尋常じゃないほどのトンボが飛んでいましたが、さすがにまだ一匹もいませんでした。そのせいか尋常じゃないほどの虫に囲まれます。んー、不愉快。虫除けスプレーは必須です。
11:55 千本峰~前朳差岳
千本峰は標高1,164m。さてここから最後のきつい登りです。序盤ほどの急登ではないものの、とにかく単調で長い登りが続きます。ポツポツと咲く高山植物に癒されながら、下山する日帰り登山者に励まされながら、じわりじわりと登っていきます。きつい。
13:00 前朳差岳~長者平
東俣彫刻公園から歩き始めておよそ6時間、前朳差岳に到着です。ようやくつらい登りから解放され、ようやく朳差岳の山頂が拝めるはずでしたが真っ白で見えません。仕方ないのでガスガスの中、稜線を進んでいきます。長者平の手前から雪渓歩きとなりますが、アイゼンは不要でした。
13:35 長者平~朳差岳山頂
長者平には池塘が点在していますが、まだまだ雪の下。飯豊連峰の稜線が拝めるはずですが、ガスっていて当然見えません。悲しい気持ちをこらえて束の間の雪渓歩きを楽しみます。夏道も出ているので雪渓を無理に歩く必要はありません。
13:50 朳差岳山頂
登山開始から6時間40分、ようやく朳差岳に到着です。眺望こそイマイチでしたがこの上ない達成感です。日帰り組はすでに下山していたため山頂には誰もおらず独り占め状態。結局この日はテント泊が一名と小屋泊の私だけでした。
避難小屋は山頂を少し下ったところにあります。木造2階建てのきれいな小屋で30人ほど収容でき、通年無料で利用可能です。トイレは別棟に2室、いわゆるぼっとん便所でタンク内の〇〇〇が丸見えです。もちろん臭いも強烈でハエも凄いです。ダメな人は絶対ダメだと思いますが贅沢は言えません。トイレットペーパーは持参しましょう。
水場は小屋裏を少し下ったところにありますが、5月20日時点ではまだまだ雪渓の下です。8月上旬くらいに雪解けの湧き水が現れる予定です。今回も雪渓を溶かして使用しましたが、残雪が多いと雪渓が近くて良いですね。
着替えや寝床の準備、昼食を取ってのんびりと過ごします。鳥のさえずりに穏やかな風が心地よく、暑くも寒くもありません。朳差岳の代名詞であるハクサンイチゲもポツポツと咲いていました。ただね、虫だけが邪魔です。
夕暮れ~明朝
夕暮れとともに一気にガスが抜けていき、なんとなく夕焼け空を眺めることができました。同時にずっと隠れていた飯豊連峰の稜線も現れてきました。じらされ続けたこともあり感動。
そして偶然にも今宵は新月。暗くなる頃には満天の星空も拝むことができました。しかしそれも束の間、次第に風が強くなり日付が変わる頃には爆風になっていました。結局明朝まで爆風は続き、小屋泊とはいえなんとなく落ち着かず熟睡できませんでした。
5:00 下山開始~登山口
翌日は3時半に起床して身支度と早めの朝食。相変わらずの爆風ですが、このタイミングではまだ視界が開けていました。しかしそれも束の間、下山する頃には再びガスに覆われていきました。
9:40 東俣彫刻公園登山口
さすがに下山は早いです。途中、ブナイデ橋下の冷たい沢水でさっぱりするのがおすすめ。この日も6,7組の日帰り登山者とすれ違いました。みんなタフだなー。
朳差岳について
朳差岳は飯豊連峰最北端の名峰で、日本200名山の一座です。一級河川である荒川の支流、大石川の源流に位置しています。朳差岳の「朳」とは、田植え前に田んぼの土をならす農具のことで、早春にこの朳を持った農夫の雪形が出現し、農事歴として親しまれてきました。
大石ダム東俣ルートは1964年の新潟国体山岳競技のために開かれた、飯豊連峰では比較的新しい登山道です。途中の月夜平では矢尻や石斧などの石器が出土することから、狩猟の基地であったことが推測されます。
山頂手前の長者平の草原には大小の池塘が点在しており、ここから飯豊連峰の女性的な山容を拝むことができます。山頂付近には高山植物も豊富で、春のハクサンイチゲ、夏のニッコウキスゲ、秋のハクサントリカブトの群落が見事だそうです。
朳差岳は日帰りでも可能ですが、やはりしっかり楽しむためには一泊二日が良いでしょう。めちゃめちゃきついですがその価値はあります。飯豊連峰の山容や可憐な高山植物、鳥のさえずりなどを聞いてのんびりと楽しみましょう。
【朳差岳】飯豊連峰の最北端|大石ダム東俣ルートから過酷な日帰り登山|2022年7月2日
2022年7月2日(土)、飯豊連峰の最北端、日本200名山の一座である朳差岳に登ったときの記録です。暑すぎず、わりと快適でしたが、めちゃめちゃ長くて日帰り登山には大変過酷でした。頂上からの展望は素晴らしく、飯豊連峰の長くて深い、女性的な山容はとても魅力的でした。次は一泊二日でゆっくり堪能したい、そんな山でした。
参考文献
新潟県山岳協会:新潟100名山, 新潟日報事業者, 2010
新潟県山岳協会:新潟100名山+10, 新潟日報事業者, 2020