【朳差岳】飯豊連峰の最北端|大石ダム東俣ルートから過酷な日帰り登山|2022年7月2日
朳差岳の登山を検討中の方
『朳差岳ってどんな感じだろう。なにか情報があれば教えてほしい。』
この記事は備忘録ですが、少しでも参考になれば幸いです。
本日の内容
- 感想
- スケジュールなど
- 登山ルート
- 朳差岳について
スポンサードサーチ
感想
今回は日帰りの強行登山でした。暑さというよりも、とにかく長くてめちゃめちゃ過酷でした。新潟 山のグレーディングの通り、本来であれば体力面を考慮すると一泊二日が適切な山です。
前朳差岳までがとにかく長い長い。辛くて途中で引き返そうかと思ったくらいです。しかし前朳差岳以後の眺望がとてつもなく素晴らしい。長くて深い飯豊連峰の峰々、まだまだ残る雪渓や新緑色の木々、さらに青い空に白い雲のアクセント。どれをとっても一級品の景色です。
体力面の話を抜きにしても、せっかく行くなら日帰りではもったいない山です。飯豊連峰の最北端は伊達ではありません。避難小屋泊なら水場は確保できるので、あとは十分な食料と寝具、適切な服装を持って臨みたいものです。
スケジュールなど
【日にち】2022年7月2日(土)
【天候】晴れ、微風
【気温】体感では20℃台で推移だが、昼間の日差しは強い
【登山ルート】大石ダム東俣ルートからピストン
【時間】10時間15分(上り5時間30分、休憩60分、下り3時間45分)
【電波状況】電波障害の影響で詳細不明だがおそらく圏外(au)
持ち物
注意点
水分は下山終盤で使い切ってしまいました。途中で明らかに不足することが予想されたので、カップラーメンは避難小屋直下の雪渓を溶かして使ったり、カモス橋から林道にかけて点在する湧き水でカバーしました。したがって、水分はトータルで3ℓくらい使ったと思います。熱中症対策として水分摂取は重要ですが、水だけではダメです。ポカリスエットなどのスポーツドリンクの粉末を持っていくと非常に効果的です。
登山ルート
朳差岳へのルートは3つあります。大石ダムの東俣ルート、大石ダムの西俣ルート、奥胎内の足の松尾根から巻いてくるルートです。なお現在、西俣ルートは未整備のため通行止めとなっています。
今回、わたしは大石ダムの東俣ルートからピストンしてきました。若干ヤブっていましたが、道迷いの心配はありませんでした。基本的に登山道が狭く、積雪によって一部崩れかけている箇所もありました。
公式な水場
4:30 東俣彫刻公園登山口~ブナイデ橋(1号橋)
大石ダムから5分ほどで東俣彫刻公園に到着。林道に続くゲートがあるので一般車両はここまで。公園の駐車場には合計15台ほど停められます。登山届はゲート脇に設置されています。
ゲートをくぐると嫌になるほど長い林道が続きます。20分ほど歩いたところに唯一の湧き水があります。序盤なので補給はしませんでしたが、下山時にお世話になりました。
大石ダムの水量観測地を通過。この辺りはイワナ釣りの名所らしいです。それもそのはず、渓流がとってもきれいです。
道中、ちょくちょく鉄砲水らしき痕跡を見かけます。よく見ると道路にタイヤ跡がありますが、ゲートに侵入した登山客の一般車両です。まあ本当はダメなのでしょうが、暗黙の了解ってやつですかね。途中で越されましたが、乗せていって欲しかった。
大阪市立大学ワンダーフォーゲル部「松村千鶴」さんの慰霊碑。昭和40年生まれなのか、昭和40年没なのかわかりませんが、登山事故には細心の注意を払いたいです。合掌。
ようやく長い長い林道が終了。看板には「朳差岳山頂まで6.5km、約6時間ほど」と書かれています。はい、本格的な登山はこれからです。
5:35 ブナイデ橋(1号橋)~カモス橋(2号橋)
ブナイデ橋(1号橋)を渡るとブナ林、月夜平と呼ばれる少し開けた場所を通り過ぎると急登です。ゴヨウマツの多い乾いた尾根道をしばらく登り、やや切れ落ちた斜面をトラバースしてカモス橋(2号橋)に一旦下ります。橋の手前に湧き水が出ていますが公式ではありません。あまり当てにしないほうが良いでしょう。
5:55 カモス橋(2号橋)~カモスの頭
カモス橋(2号橋)の幅は1.5m程度、東俣川まではかなりの高度感があり尻込みしてしまいます。
カモス橋からカモスの頭までがこのルート最大の急登です。樹林帯なので直射日光こそ防げるもののここはヤバいです。木の根を掴んでよじ登るなど、とにかく斜度がきつく、なにより長い。ここで大幅に体力を削られてしまい、引き返そうかと思いました。雨量計を過ぎてしばらく進むと少し開けます。ここからカモスの頭と権内ノ峰が確認できます。
7:00 カモスの頭~権内ノ峰
ようやくカモスの頭に到着。やや平坦になりますが、まだまだ続きます。ここから権内尾根となり、展望の利く尾根道となります。ポンと突き出た権内ノ峰が確認できます。手前の登りにロープの張られた岩場がありますが全然大したことはありません。
7:30 権内ノ峰~千本峰
権内ノ峰は標高1,001mの独標です。写真中央のピークが前朳差岳で抜群によく見えます。そのすぐ左側の三角に突き出たピークが鉾立峰です。朳差岳はここからでは確認できません。先が見えてきたので少しホッとした気持ちになります。
2枚目の写真中央付近が権内ノ峰、その左側のピークが前朳差岳です。ところで、権内ノ峰あたりから尋常じゃない量のトンボが飛んでいます。ここから先、おかげさまで虫があまりいません。
8:05 千本峰~前朳差岳
千本峰は標高1,164m。木の根元にひっそりとそれらしき看板がありましたが、文字が擦れてまったく読めません。おそらく千本峰と書いてあったのでしょう。千本峰から遠くに目をやると大沢の3段の滝が確認でき、ゴーッという音が聞こえてきます。
さてここから最後の登りです。序盤ほどの急登ではないものの、それに匹敵するくらいの辛さです。残雪や遠くの峰々の景色に癒されつつ、単調な登りをおじいちゃんみたいに両手で杖をつき、じわりじわり、まだかまだかと進んでいきます。
9:10 前朳差岳~長者平
東俣彫刻公園から歩き始めておよそ4時間30分、前朳差岳に到着です。ようやくつらい登りから解放され、ここでようやく朳差岳の山頂が望めます。
それにしても素晴らしい。朳差岳に続く尾根のイケメンぷりが半端ないです。がんばって登ってきた甲斐があります。ここまで来たらあとは快適な稜線歩き。尾根の右側左側やヒメサユリの群生を眺めつつ進んでいきます。
9:45 長者平~朳差岳山頂
あっという間に長者平に到着。前方には朳差岳から鉾立峰、大石山、頼母木山、地神山、門内岳へと続く稜線が確認できます。深くて長い、そして美しい。圧巻の景色に魅了されます。7月ですが、まだまだ雪渓が残っています。
長者平には広い草原に池塘が点在しておりこれがまた見事です。とくに池塘越しの飯豊連峰の眺望に、今までの疲れが吹き飛びます(一瞬)。個人的には山頂よりも、長者平から眺める飯豊連峰のほうが好きです。
昔はこの辺りに避難小屋があったそうですが、現在は取り壊してありません。その代わりと言っては変ですが、県消費や慰霊碑が点在しています。
10:00 朳差岳でお昼ごはん
登山開始から5時間30分、ようやく標高1,636mの朳差岳に登頂しました。とても長かった。辛くて引き返したくなりましたが、ここまで来れて良かったです。
頂上はそれなりに広く、人も少ないので休むスペースは十分にあります。ここで御年81歳の大ベテランさんに遭遇しました。奥胎内の足の松尾根から来たそうですが、高齢を理由に今回で登り治めのようです。飯豊連峰についてあれこれご教授いただいた後、その方は涼しい顔をして下りていきました。たまにいるんですよね、スーパー81歳。
頂上からの眺望もまた見事で、稜線がばっちりと確認できます。少し下ったところに朳差岳避難小屋が見えます。木造2階建ての小屋で30人ほど収容でき、通年無料で利用可能です。トイレは別棟に2室ありますが、トイレットペーパーは持参しましょう。あと、仕方ないことですが臭いが強烈です。
水場は避難小屋の裏から数分下ったところにありますが、7月2日時点ではまだ雪渓の下でした。7月中旬くらいに雪渓の下に雪解けの湧き水が現れるそうです。今回は雪渓を溶かして使用しました。そして、山頂で食べるカップラーメンのおいしさは異常です。
11:00 下山開始~登山口
何度も振り返りながら下山を開始します。残念ながら少しガスってきました。冒頭にも書いた通り、下山終盤(カモスの頭付近)で水分を使い切ってしました。下ってしまえば湧き水があるのは承知していたため、そこまでは少し我慢です。
湧き水にポカリスエットの粉末を入れて水分補給。滝汗をかく登山において、水だけでは熱中症対策として不適切です。電解質バランスを考慮するとポカリスエットが最強です。いいですか、アクエリアスではなくポカリスエットです。粉末であれば少し濃いめに作るのがポイントです。まじで。
14:45 東俣彫刻公園登山口
気力を振り絞ってなんとか下山です。力を出し尽くしました。最後の林道が長すぎて心が折れます。
余談ですが朳差岳を登っていたら、以前登った苗場山の赤湯温泉ルートを思い出しました。ここも朳差岳並みに厳しい山行でした。
【苗場山】過酷な赤湯ルート|初日に登頂後、山口館で一泊した登山旅|2020年9月12-13日 | matsukenblog
【スケジュール】初日:駐車場から山頂まで一気に登って下りて赤湯温泉山口館に宿泊(9時間15分)。2日目:下山(2時間)。2日目をのんびりしたかったので強行しましたが、実際めちゃめちゃキツいです。初日にきちんと宿泊してから登るのがおススメです。なお、スタミナがあれば駐車場 ↔ 山頂のピストンも可能です。
朳差岳について
朳差岳は飯豊連峰最北端の名峰で、日本200名山の一座です。一級河川である荒川の支流、大石川の源流に位置しています。朳差岳の「朳」とは、田植え前に田んぼの土をならす農具のことで、早春にこの朳を持った農夫の雪形が出現し、農事歴として親しまれてきました。
大石ダム東俣ルートは1964年の新潟国体山岳競技のために開かれた、飯豊連峰では比較的新しい登山道です。途中の月夜平では矢尻や石斧などの石器が出土することから、狩猟の基地であったことが推測されます。
山頂手前の長者平の草原には大小の池塘が点在しており、ここから飯豊連峰の女性的な山容を拝むことができます。山頂付近には高山植物も豊富で、春のハクサンイチゲ、夏のニッコウキスゲ、秋のハクサントリカブトの群落が見事だそうです。
関川村の日帰り温泉施設
桂の関温泉ゆ~む
道の駅関川にある日帰り温泉施設。一番わかりやすく、一番入りやすい。料金は大人700円。
越後雲母温泉 高台の宿 寿荘
利用可能時間は13:00~21:00、料金は500円。
雲母温泉共同浴場
料金は破格の100円。ただし、あくまでも集落のための共同浴場。
雲母温泉 上関共同浴場
料金は破格の100円。こちらも、あくまでも集落のための共同浴場。
湯沢共同浴場
料金は格安の200円。上記の共同浴場よりも多少大きい。
荒川いこいの家
料金は大人400円。一応日帰り入浴施設で、わりと広々している。
参考文献
新潟県山岳協会:新潟100名山, 新潟日報事業者, 2010
新潟県山岳協会:新潟100名山+10, 新潟日報事業者, 2020